階段の手すりは、安全性やデザイン性において、大きな役割を担っています。手すりが古くなっている、デザインが部屋の雰囲気と合わない、家族構成の変化に伴って安全性を高めたいなど、さまざまな理由でリフォームを考えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、階段の手すりリフォームを考えている方に向けて、リフォームする理由から手すりの種類、費用相場、コストを抑える方法まで、知っておきたいポイントをお届けします。適切なリフォーム方法を選び、安心して工事を進めるための参考にしてください。
階段の手すりをリフォームする理由

階段の手すりリフォームには、見た目の改善だけでなく、さまざまなメリットがあります。
安全性を向上させるため
階段は住宅内で最も事故が起きやすい場所の一つ。高齢になると筋力やバランス感覚が低下し、階段の昇り降りに不安を感じる方が増えてきます。しっかりした手すりがあれば、体重を手すりに預けることで、足腰への負担を軽減しながら安全に移動できるのです。
また、小さな子どもは階段の危険性を十分に理解していないため、手すりが転落防止として機能。特に2〜5歳の幼児期は階段を駆け上がることも多く、両側に手すりがあると安心度が高まるでしょう。
建築基準法では、階段の安全性を確保するため一定の基準を定めています。高さ1メートルを超える階段には手すりの設置が義務付けられており、リフォーム時にもこの基準を満たさねばなりません。
デザインや見た目を改善するため
手すりは階段空間の印象を左右する要素。リビングや廊下のインテリアを一新したのに、階段の手すりだけが古いままでは統一感が損なわれてしまいます。手すりのリフォームは、投資額に対して視覚的効果が高く、コストパフォーマンスに優れた選択といえます。
和風住宅には木製の温かみのある手すり、洋風住宅にはアイアンやステンレスのシャープな手すりといった、建物全体のデザインコンセプトに合わせた選択が可能です。最近では、ガラスやアクリルを使った透明感のあるデザインも人気。開放的で明るい階段空間を演出できます。
資産価値を高めるため
住宅の資産価値を維持・向上させる観点からも、手すりのリフォームは効果的な投資といえます。
適切にメンテナンスされた住宅は、中古市場でも高く評価される傾向にあります。特に手すりは安全性に直結する設備のため、状態が良好であることは物件の印象を左右します。不動産査定においても、安全設備の状態はチェック項目の一つ。手すりが新しく機能的であれば、査定額に大きくプラスになるケースもあるのです。
将来的に住宅を売却したり賃貸に出したりする際、安全性の高い手すりはアピール材料になります。特に高齢者世帯や小さな子どものいる家族にとって、しっかりした手すりは大きな安心材料。内見時に「ここなら安心して暮らせる」と感じてもらえれば、成約率の向上にもつながるでしょう。
階段の手すりの種類と選び方

手すりには多様な素材や形状があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットが存在します。使用環境や予算、デザインの好みに合わせて最適なものを選びましょう。
素材別の特徴
・木製
温かみがあり、手触りが柔らかいことが、木製の最大の魅力です。冬場でも冷たくならず、握りやすいため高齢者から特に支持を集めています。人気の樹種としては、耐久性の高いオーク材や、軽量で加工しやすいパイン材などがあります。
・金属(ステンレス・アイアン・アルミ)
耐久性が高く、メンテナンスが容易であることが、金属製の特徴です。ステンレスは錆びにくく清潔感があり、屋外でも使用できる万能素材。アイアンは重厚感があり、クラシックやアンティーク調のデザインに最適です。アルミは軽量で加工しやすく、コストパフォーマンスに優れています。ただし冬場は冷たく感じることがあり、デザインによっては無機質な印象になる点に注意しましょう。
・ガラス・アクリル
透明感があり、空間を広く見せる効果があります。光を遮らないため、階段周辺が暗くなりがちな間取りでも明るさを保てます。モダンでスタイリッシュなデザインが多く、高級感も演出できるのです。ただし指紋や汚れが目立ちやすく、こまめな清掃が必要になります。
・混合素材
木製の手すり部分と金属製の支柱を組み合わせるなど、複数の素材を組み合わせたタイプも存在します。例えば「木製の握り+ステンレス支柱」の組み合わせなら、握り心地の良さと耐久性を両立できるのです。
形状・構造による違い
・壁付けタイプと自立タイプ
壁付けタイプは壁面に直接取り付ける方式で、省スペースでコストも比較的抑えられます。ただし壁の下地補強が必要になる場合も。自立タイプは床や階段から独立して立つ構造で、デザインの自由度が高い反面、施工費用は壁付けタイプの1.5〜2倍程度になります。
・直線タイプと曲線・螺旋タイプ
一般的な直線階段には直線タイプの手すりが適しており、施工も比較的簡単。既製品も豊富で、コストを抑えやすいのが特徴です。螺旋階段や曲線階段には専用の曲線手すりが必要で、オーダーメイドになることが多く、費用も直線タイプの2〜3倍になります。
太さや断面形状の選び方
手すりの太さは握りやすさと安全性に直結します。一般的には直径30〜40ミリメートル程度が標準とされ、成人が握りやすいサイズです。高齢者の場合、35ミリメートル前後がしっかり握れて力を入れやすい太さ。小さな子どもには28〜32ミリメートル程度の細めの手すりが向いています。
断面形状は円形や楕円形が手のひらにフィットしやすいため、安全性が高まります。
階段の手すりリフォーム費用の目安

階段の手すりリフォームの費用は、工事内容や使用する材料によって大きく変動します。工事パターン別の手すりリフォームの費用相場は、以下の通りです。
シンプルな壁付け手すりの新設:3万円〜10万円
既存手すりの交換:5万円〜15万円
下地補強やクロス張り替えを含む大規模リフォーム:10万円〜25万円
新しく手すりを後付けする場合
既存の階段に手すりがなく、新たに設置する場合の費用相場は、直線階段で3万円〜10万円程度。壁付けタイプの場合は比較的安価で、木製やアルミ製なら3万円〜5万円程度で施工できます。階段の長さは費用に直結し、一般的な13段の階段(約3.5メートル)を基準として、1メートル延びるごとに1〜2万円の追加費用が発生します。
既存手すりの交換(デザイン変更・ぐらつき改善)
既にある手すりを新しいものに交換する場合は、撤去費用も含めて5万円〜15万円程度が目安。単純な交換であれば5万円〜8万円程度ですが、デザインを大きく変更したり素材を変える場合は10万円以上かかることもあります。ぐらつきの改善だけであれば、補強工事のみで2万円〜5万円程度で済む場合も。
下地補強やクロス張り替えを伴う場合
壁の下地が弱く補強が必要な場合や、手すり撤去後の壁紙張り替えが必要な場合は、追加費用が発生します。下地補強は1か所あたり1万円〜3万円程度、クロス張り替えは3万円〜6万円程度が相場。これらを含めると、総額で10万円〜20万円程度になることもあるでしょう。
屋外階段の手すりリフォーム
玄関前や庭につながる屋外階段の手すりリフォームは、耐候性のある素材を使用するため、屋内より費用が高めです。ステンレス製やアルミ製で5万円〜15万円程度、長い階段や複雑な形状の場合は20万円以上かかることもあります。
費用の内訳
材料費
手すり本体の価格は素材やグレードによって大きく異なります。既製品の木製手すりなら1メートルあたり5,000円〜15,000円程度、ステンレス製は10,000円〜30,000円程度。一般的には手すり本体価格の30〜50%が部材費として加算されると考えておくと良いでしょう。
工事費
施工業者の人件費は、作業の難易度や所要時間によって変わります。一般的な直線階段の手すり取り付けなら、1日作業で3万円〜5万円程度が相場。地域による差もあり、都市部では地方より1.2〜1.5倍程度高めです。
追加工事の有無
下地補強、壁紙の張り替え、古い手すりの撤去処分費などが追加でかかる場合があります。見積もり段階で「追加工事の可能性」について業者に確認し、予算オーバーを防ぎましょう。
階段の手すりリフォームのコストを抑える方法

予算に限りがある場合でも、工夫次第でコストを抑えながら安全で快適な手すりリフォームが実現します。
既存の手すりを活かしたシンプルなリフォーム
手すり本体の状態が良好であれば、全交換ではなく部分的な補修や塗装で対応することも検討しましょう。木製手すりの場合、研磨して再塗装するだけで見た目が新品同様になり、費用も2万円〜5万円程度に抑えられます。全交換と比べて3〜5割のコストで済むのです。
ぐらつきが気になる場合は、ブラケットの増設や締め直しだけで改善できることも多く、1万円〜3万円程度で済みます。既存の支柱を残して手すり部分だけを交換する方法もあり、デザインを一新しつつ工事費を抑えることができるでしょう。
【さいたま市】国や自治体の補助金・助成金を利用する
高齢者や障害者のいる世帯では、バリアフリーリフォームとして補助金や助成金を利用できる場合があります。
介護保険制度では、要支援・要介護認定を受けている方が住む住宅の手すり取り付けに対し、住宅改修費の補助が受けられます。支給限度基準額は20万円で、所得に応じて7〜9割(14万円〜18万円)が保険から給付されるため、自己負担は1〜3割で済みます。つまり最大20万円の工事に対して、自己負担は2万円〜6万円程度となる計算です。
補助金の申請には事前申請が必須です。工事の承認を受ける前に着工してしまうと支給対象外となるため、必ず工事前に自治体の窓口やケアマネージャーに相談しましょう。介護認定を受けるまでに1ヶ月ほどかかることもあるため、余裕を持って計画を進めることをおすすめします。
さいたま市の助成制度について、さらに詳しく知りたい方はこちら
国の「リフォーム減税」については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
DIY併用はできる?
手すりの取り付けは安全性に直結する工事のため、基本的には専門業者に依頼することを推奨します。特に構造に関わる下地補強や、建築基準法に適合させる必要がある工事は、必ず資格を持つ施工業者に依頼してください。
ただし塗装や簡単な清掃、既存手すりの研磨など、専門技術を必要としない作業は自分で行うことでコストを抑えられます。例えば木製手すりの研磨作業を自分で行えば、2〜3万円の節約になるでしょう。
DIYを検討する場合でも、最終的な安全確認や取り付け強度のチェックは必ず専門家に依頼し、安全性を最優先に考えましょう。

まとめ
階段の手すりリフォームは、安全性の向上だけでなく、インテリアとの調和、資産価値の維持など、複数のメリットが得られます。
費用を抑えるには、既存の手すりの活用、補助金・助成金の利用、部分的なDIY併用などの方法がありますが、安全性を最優先に考え、専門業者への依頼が基本です。
まずは複数の業者から見積もりを取り、現地調査で詳細な状況を確認してもらってください。予算と希望をしっかり伝え、納得できるプランを選ぶことが成功への近道。安全で快適な住まいを実現するために、本記事の情報を参考にしながら、最適なリフォーム計画を立ててください。
