暖房を入れても床が冷たい、朝になると窓が水滴が曇っている、毎月の光熱費が右肩上がり……。その悩みを解決できるのは断熱リフォームです。壁・床・窓などからの熱の出入りを防ぎ、暖房効率が上がり、光熱費の無駄も減ります。
とはいえ、断熱リフォームは安い工事ではありません。だからこそ、費用を抑えるには、国の断熱リフォーム補助金制度の活用がポイントです。壁・床・窓の断熱や給湯器の省エネ化までカバーする補助制度が4つあります。
ただし、制度ごとに対象となる工事や申請の流れ、提出書類、契約の順番が異なり、段取りを間違えると補助金を受けられない場合もあります。依頼先・書類・申請のタイミングの3つを理解しておくことが、補助金を逃さないコツです。
この記事では、断熱リフォームのメリットと、使いやすい補助金制度の特徴をやさしく解説します。
目次
断熱で家はどう変わる?冬の底冷え・夏の暑さ・結露・騒音

壁や床下、窓、屋根・天井まで断熱を整えると、外気の冷たさや暖気の逃げ道が少なくなり、室内の温度の均一化が可能です。そうなると、起床時の血圧変動が抑えられ、身体が目覚めやすくなります。温度差からのヒートショックによる倦怠感も感じにくいのがメリットの一つです。
室温は、外気温と住宅の断熱性能によって決まります。
断熱が弱いと、壁や窓からの冷気が伝わり、暖気が保てません。断熱性能が十分であれば、暖房の効きがよく、家中が暖まります。
湿度は温度と深く関係しており、結露が発生する場合は断熱が十分でないサインです。
冷気の流れ込みや結露を防ぐには、内窓を重ねることが断熱効果を得られやすくなるポイントです。一方、壁や屋根・天井の断熱は、住宅全体を外気から防ぎ部屋ごとの温度差を小さくします。さらに床下断熱は、足元からの冷えを防ぎ、部屋の上下の温度が安定します。
断熱で室内表面温度が下がりにくくなり、結露が起きにくく快適さが保たれます。
どこから始める?断熱リフォームの費用対効果と優先順位
断熱リフォームは、室温を安定させたいスペースから少しずつ段階的に整えるのが低コストです。
全体の優先順位は、①窓→②天井→③床下→④壁→⑤屋根の順です。この順番に断熱リフォームを整えることで、省エネで快適な住宅となります。
優先度による段階を詳しく説明すると、まず建物の熱の出入りを防ぐ窓から始めます。次の天井は暖気を逃がさず、床下は冷気を抑えて室温を安定させ光熱費削減に強い場所です。ここまでは、短期間で施工でき、住みながらの工事が可能です。
壁断熱は、広い面からの熱の出入りを防ぐ反面、工事範囲が大がかりになる傾向にあります。そこで、外装や内装のリフォームと同時進行がおすすめです。さらに、屋根の断熱塗装を組み込むと、家全体の断熱性能は安定的に長続きします。

まず室内を暖かくするには窓・天井・床下など、効果が得られやすいところからです。
壁断熱リフォームで室温を整えて快適な住まいへ

住宅内の寒さや暑さの問題には、壁の断熱効果を高めることが有効です。住まい全体の壁を断熱改修する場合、費用相場はおおむね80~350万円のケースが見受けられます。工事範囲を広げる必要があるため、工期は2週間~1ヶ月くらいかかります。
築年数が経つと断熱性能が低下しやすくなります。適切な断熱補強で、冷暖房効率の向上と光熱費の削減が期待できます。
また、壁断熱とセットで効果が期待できるのが、天井・屋根・窓・床下の断熱リフォームです。天井の目安は、費用が4,000~8,000円/㎡ ・工期が 1~2日、屋根の断熱塗装は3,000~6,000円/㎡ ・工期は1~4週間が目安と考えて下さい。内窓は費用が8~30万円/1箇所 工期が 1~2日、床下断熱は4,000~8,000円/㎡ で工期が1~2日が一般的となります。
| 工事箇所 | 費用 | 工期 |
| 天井断熱 | 4,000~8,000円/㎡ | 1~2日 |
| 屋根の断熱塗装 | 3,000~6,000円/㎡ | 1~4週間 |
| 内窓 | 8~30万円/1箇所 | 1~2日 |
| 床下断熱 | 4,000~8,000/㎡ | 1~2日 |
なお、選択肢として、内壁を解体し断熱材を入れる工法と、内壁を残し室内側へ断熱材を重ねる工法があります。特徴や費用目安を紹介します。

壁の断熱により外の冷気を防ぐだけでなく、暖房を切ったあとも室温が長く保たれます。
内壁解体の壁断熱リフォーム|費用・工期・メリットを簡潔に解説
住宅の内壁を解体し、壁内のスペースに断熱材を追加する方法は、季節を通して室内の寒さや暑さの軽減効果がとても期待できます。壁内の状態を確認しながら施工できるので、経年劣化を見逃しません。必要な施工が明確になり、断熱効果を高めやすいのがメリットです。
費用は延床120㎡のケースで140~210万円ほどが目安で、工期は2週間~1ヶ月程度が一般的といわれます。壁の解体に加え、仕上げ材の張り替えの進行は大がかりですが、内装のデザインを好みに変えられるのも定番人気の理由です。ただし、施工時の懸念として、騒音や粉じんが気になるため仮住まいを検討する必要があります。
広範囲の内装改修との同時進行がスムーズです。断熱性能の強化、壁内部の劣化改善に適した工法です。
壁を壊さない重ね張り断熱|短工期と段階的施工がメリット
住宅の内壁に手を加えず、壁に断熱材を重ねていく工法が人気の理由として、生活の場を変えずに断熱効果を得られる点です。
費用の目安は6畳2面で約18万円からが一般的で、1㎡:4,000~7,000円くらいでできるケースもあります。室内温度を調整したい部屋をピンポイントで施工できる点からも、段階的に進めやすいので選ばれやすいです。工期も1~2週間前後と短期間なのも大きなメリットです。
デメリットとして、直接重ねられた壁面は室内側へ数cm張り出し、通路が少し狭くなります。特に、壁際がベッドやタンスだと、わずかな厚みでも動線に違和感を感じます。また、コンセントやスイッチ、エアコン配管の位置は、壁に隠れないよう移設しましょう。
隙間を丁寧に塞がないと、下地のわずかな凹凸や配線部分の逃げから、断熱材と壁のあいだに外気が入りこみやすい点も注意が必要です。
内装リフォームとセットで行うと、コスト面が非常によくなり、住み続けながら工事規模を抑えられる選択肢です。
住みながらできる床下断熱リフォームで底冷えを緩和

冬の底冷えは、床下から熱が逃げることが大きな原因のひとつです。床下断熱リフォームは、床を剥がさず短期間施工のため、住みながら進められるのがポイントです。他にも住宅や目的に合わせて選べる方法があります。発泡ウレタンを吹き付ける工法や、床を張り替えて断熱ごとに新しくする方法、などです。
さらに、床暖房と組み合わせれば、熱を逃がさず効率よく暖かい室内を保てます。主な工法と費用の目安を紹介します。

見えない床下からの断熱は足元の冷えが減り、あたたかさを感じる範囲が広いです。
床下断熱リフォーム|費用・工期・メリットを簡潔に解説
床下断熱リフォームは施工方法により費用の差はありますが、工期はいずれも短期です。そのため、住みながらのリフォームに適しています。
床を剥がさず床下から断熱材を敷き込む場合、 費用は10~30万円(4,000~8,000円/㎡)工期は1~2日が一般的な目安です。発報ウレタンなどを床下からの吹き付け施工の場合、 費用は30〜40万円 ・工期は1~2日のケースが見受けられます。
さらに、床を一度剥がして断熱材を入れ直し、新しい床材を張る場合は、費用は70~110万円ほど、工期は3~6日程度で見ると安心です。
床下の高さや配管の位置、床材の傷み具合、住みながらの施工は可能かなど、の条件により工法の選択肢はさまざまです。短期間の仕上げには床下からの施工、床の劣化や段差の解消には床を剥がす施工が向いています。
床下断熱リフォームの工法を徹底比較
床下断熱リフォームの工法は、お伝えした3つに分かれます。
床下から敷き込む場合、点検口から職人が床下に入り、床下の骨組みの隙間にボード、マット状の断熱材を差し込んでいきます。
既存の床を残して施工でき負担が少なく、技術の丁寧さが断熱効果を左右するので、床下の構造が単純な場合に特に適しています。
また、床下から吹き付ける工法では、発泡ウレタンを床裏に直接吹き付けて密着させます。凹凸や配管が多い床下でも隙間なく施工が可能で、冬になると床がひんやりする住宅に向いています。すでに断熱材がある場合も上から重ねられるのも利点です。施工後は床下全体が覆われるので、点検方針や仕上がり範囲を事前共有しておくと安心できます。
施工後は断熱層が床下全体を覆うため、点検やメンテナンスを行う前に業者と仕上がりの範囲や目的を明確にしておくと安心です。
最後は、床を一度剥がして断熱材を入れ替え、新しい床材を張り直す工法です。下地の凹凸を直しながら断熱材を均一施工し、床全体の温度ムラを抑えます。下地の補修や段差の調整を行いながら、断熱層を均一に整えられる点が特長です。下地の凹凸を直しながら断熱材を均一に施工することで、床全体の温度ムラが抑えられ、過ごしやすい体感温度を保てます。特に、床の老朽化・沈みがある場合、床暖房の導入・バリアフリー化もセットでご検討の場合に得られる効果が大きいと言われています。解体と復旧の準備に時間がかかりますが、内装を変える工法としても人気です。
住宅の構造や床下の状態、求める快適さに合わせて工法を選ぶことが、納得の仕上がりにつながります。
床下断熱は熱を逃さず、床暖房が暖める組み合わせで効率的な快適さ
床下断熱と床暖房をセットで計画すると、床面に熱が留まるので熱の立ち上がりが早く、限られたエネルギーで室内の暖かさが持続します。
床下からの冷気や熱逃げを断つと、敷く床暖房が広範囲でなくとも断熱が効いていて、低コストですみます。 例としては、家事・仕事など長時間いるスペースに絞って電気式床暖房を一畳あたり費用5~8万円・工期1~2日で直張りすることです。短期間で床を壊さず導入でき、ランニングコストの低さが人気です。
LDK全体の寒さが気になる場合でも、まず床下で熱が逃げないようにすることが鍵です。移動の多い通路やリビングのくつろぎスペース、料理をするキッチン前など、人が長くいる生活の中心になる場所だけ床暖房を敷くのも生活動線が快適になります。このようにすると、床暖房の敷設面積を床全体の5~7割程度に抑えても暖かく、 ランニングコストが低減します。
床の傷みや段差の修繕とあわせて床暖房を導入する場合は、床を剥がして断熱材から作り直す工法が一般的です。床断熱と床仕上げは、費用:70~110万円 工期:3~6日ほどが目安となります。ここに床暖房を敷設する場合は、張り替え敷設で8~11万円/畳が加算されます。
直貼りの床暖房では床が高くなり、ドアが当たったり、小さな段差ができたりするので下地から高さを揃えて仕上げることが必要です。段差解消やバリアフリー化には、下地から高さを揃えて仕上げる床を張り替える工法が適しています。
リビングなど広い場所で長く使うなら、長期的に光熱費を抑えられる温水式床暖房が向いています。注意点は、温水式はお湯をつくる機械も合わせて設置が必要なことです。設置や交換にかかる費用が25~100万円ほどと高コストです。
仕上がり高さについては、直貼り施工なら約12〜18mm上がるため建具干渉に注意が必要です。張り替え施工なら床の高さを整えながら断熱と一体で仕上げられるため、段差解消やバリアフリー化も同時に実現できます。
2025年度の断熱リフォーム支援事業の主要制度を簡潔に解説

断熱リフォームでも、補助制度を目的に応じて選べることで、余計なコストを抑えることが可能です。対象となる工事や申請ルールを制度ごとに理解し、ぴったりな補助制度を見つけましょう。
ここからは、4つの制度の特徴と運用の基本を紹介します。

制度名がたくさんあって難しそうに見えますが、リフォームしたい場所を決めるだけで、使える制度が自然と見えてきます。
対象制度を選べば最適な補助が見えてくる
断熱リフォーム補助金の支援事業で代表的なのは、子育てグリーン住宅支援事業と、断熱リノベ(既存住宅における断熱リフォーム支援事業)の2つです。
子育てグリーン住宅支援事業は全世帯が利用でき、壁・床・天井・窓などの断熱工事に使えます。開口部、躯体断熱、エコ設備の3区分で申請でき、 2つ実施で最大40万円、3つすべてで最大60万円まで補助されます。
断熱リノベは、住宅全体の断熱性向上の制度で、壁・床・天井が対象です。補助率は工事費の1/3以内、戸建てなら上限120万で、底冷えや室温差をなくしたいリフォームに適しています。
断熱対策では、熱の約5割が逃げる窓も要注意で、先進的窓リノベ事業なら内窓が1ヶ所12,000~106,000円の補助金が受けられます。ただし、対象は窓・ドアのみです。
断熱工事以外に、給湯省エネ事業で熱を無駄にしない給湯器を設置する補助金が受けられます。エコキュートなら1台6万円、より省エネ性能の高いモデルなら最大+7万円まで支給されます。さらには、古い電気温水器の撤去で+4万円、蓄熱暖房機なら+8万円を上限2台までが補助の対象です。
制度の損しない進め方のヒント
補助金を最大限使うには、制度と工事の組み合わせを事前に決める必要があります。
子育てグリーン住宅支援事業では、開口部、躯体断熱、エコ設備のうち2つ以上の工事なら補助金の対象となります。
断熱リノベで要注意なのは、交付決定前に契約や着工をすると補助金が受けられない点です。最初に申請しておきましょう。
損をしないためには、工事部位ごとに制度を組み合わせることです。リフォーム箇所に応じて制度を使い分けることで、補助の範囲を広げられます。ただし、ひとつの工事を複数制度で重複申請することはできません。
断熱リフォーム申請には|事業者・書類・契約タイミングを揃えて
断熱リフォームの補助制度は4つありますが、どの制度でも共通して大切なのは、登録された事業者に依頼すること・必要書類を揃えること・申請前に契約・着工しないことです。
ただし、制度ごとに対象や手続きの仕方が違います。
断熱リノベは壁・床・天井、など住宅全体が対象で、住宅省エネ支援事業者と登録製品の使用が必須です。そして、図面や仕様書などの書類が必要です。申請より先に契約や工事を始めると補助金が受けられません。
子育てグリーン住宅支援事業は、窓・断熱材・給湯器など対象が幅広く、申請は登録された工事事業者が行います。こちらも申請後に契約・着工するのが原則です。
先進的窓リノベは窓・ドア専用の制度で、工事内容や写真の提出も含め、申請から完了報告までオンラインで完結します。交付申請前に契約すると対象外になる点はほかの制度と同じです。
給湯省エネ事業は給湯器の省エネ改修が対象で、書類は比較的少なめですが、住宅省エネ支援事業者による申請が必要となります。他の制度と併用する場合は、申請→交付決定→契約・工事の流れを守るのが安心です。
仕組みは共通していますが、対象や手続きは制度ごとに違います。工事内容に合った制度を選ぶ事が大切です。
まとめ
断熱リフォームは住まいの寒さや結露を改善できますが、費用負担が大きく補助制度の活用が重要です。制度によって対象工事や申請方法は異なりますが、住宅省エネ支援事業者に依頼すること・必要書類をそろえること・申請前に契約しないことさえ守れば大きな失敗は避けられます。
どこを断熱したいのか決めたうえで、条件に合う制度を選べば、負担を抑えながら快適な室内づくりを進められます。
あなたの暮らしにフィットするリフォームなら、ISMがしっかりサポートいたします。お気軽にご相談ください!

